感染症<2>
(Infectious disease)

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細菌やウイルス、寄生虫など病原性のある微生物が私たちの体内に侵入して引き起こす病気を感染症といいます。私たちの体はたくさんの微生物と共存しているので、体に微生物が付くだけでは感染症にはなりません。感染症を発病するかどうかは病原体の感染力と体の免疫や抵抗力とのバランスによって決まります。 今回は、結核について取り上げます。また、感染症予防における換気とマスクの意義についても簡単に述べます。

結核

結核は、昔は「国民病」といわれ、日本人の死亡原因の第一位でした。その後医療の向上や衛生状態の改善に伴い結核患者は減少しましたが、未だ日本では米国の3倍以上の人が結核になっています。結核は海外、中でも途上国に多いため渡航する際には注意が必要です。 結核は結核菌による慢性的な感染症です。結核を発病した人が咳やくしゃみをしたときに出る飛沫の中には結核菌が含まれ、空気中を広くただよいます。そのため、結核を発病した人から離れていても、飛沫を肺の奥深くまで吸い込むことで結核菌に感染してしまいます。感染しても元気で抵抗力があれば結核になりませんが、高齢者など免疫が低下していると結核を発症します。結核は初期の症状が軽く、ゆっくりと進行するため、なかなか病気に気づかれることがありません。「2週間以上続く咳」は結核を疑うサインであり、咳が続く場合は医療機関を受診することが勧められます。結核にかかっても、現代では複数の結核の薬を6カ月から9カ月間飲むことで治療することができます。結核をそのまま放置したり、薬を途中でやめてしまうと、結核菌が肺から全身にひろがってしまうことがあります。定期的な結核健診により結核を早くに見つけることが重症化と周りの人への感染を防ぐことにつながります。また、免疫力を高めることは結核の発症を予防します。 結核に対するワクチンがBCGです。BCG接種は子どもに有効で、日本では生後1歳までに接種を行います。ただし、結核が多くない先進国、たとえばアメリカではBCG接種を行っていません。BCG接種を受けた人が留学などで渡米する際には、BCG接種歴の証明書と、胸部エックス線検査や血液検査(抗原特異的インターフェロン-γ遊離検査:IGRA)が必要となる場合がありますので事前の確認が必要です。

換気とマスクの意義

ヒトに流行する感染症の多くは、口や鼻から出てきた病原体をふくむ小さな飛沫の吸い込み(空気感染)、大きな飛沫の粘膜への付着(飛沫感染)、病原体の付いた手で粘膜を触る(接触感染)、病原体を飲み込む(糞口感染)ことにより広がっていきます。マスクの着用はしぶきの排出と吸い込みを防ぎ、換気は空間中にただよっているしぶきの量を減らします。





(慶應義塾大学保健管理センター 康井 洋介)


※本内容は「改訂・健康のすすめ―健康な学校生活のために(小・中学生用)― 2023」(一貫教育校小中学校で配布)から引用、一部改変したものです。